清洲といえば織田信長と連想するほど名高い地で、このお宅もまた初代は織田家に仕え、先祖は地方銀行に興すなどした地域の名家です。
敷地は五条川にかかる橋のたもとで街道筋に面し、町家風の重圧な造りの母屋を中心に、蔵が幾つも連なり、茶室や離れをそれぞれの庭の石畳や飛石が繋がりを保たせています。
その静かな佇まいにも時の流れに逆らう事が出来ない事態がやってきました。それは県道の計画でこの敷地が約三分の一かかってしまうということでした。
この計画に対し私たちは、歴史的な建築物をどのように保存し、後世にどのようなかたちで保存していくかをコンセプトにご当主と検討を重ね、在来の建築の良さをそのままとし、現代的な設計手法により住まいやすく耐震性能にも充分であるよう考慮し施工する方法をとりました。
この事により一部分の蔵を撤去したり曳家をして母屋の保存最優先として実施計画をしました。
また母屋は一部分計画道路にかかるため一部解体曳家をし復元の方法をとりました。
現代社会ではこのような歴史的伝統建築の保存をする考え方が増えてはいるものの、まだまだ解体して処分してしまう家屋が多く古材バンクという考え方も有りますが、やはりこれらの歴史を維持した空間を失う事をしたくないものです。
撮影:スタジオバク